ママペイの効果を教育学的にみる

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最近「ママペイ」っていうのをよく聞くけど、ウチでも導入して大丈夫かな。。。

ママペイとは何か、その教育学的しくみとメリットデメリットをお話ししていきます。

ママペイとは

私はこちらのツイートでママペイを知りました。

要するに、お手伝いや宿題、早寝早起きなどに対してご褒美を設定するということですね。

このように「行動」に対して「対価」を設定するのは、教育現場でもよくあることです。
ですから、一概に良い悪いを決めつけるのはナンセンス。

ただし、これから導入するつもりであれば、その教育学的効果と仕組みは知っておいたほうがいいかもしれません。

教育心理学からみるママペイ

それでは、少し専門的なところから考えてみましょう。

※時間に余裕のない方はこの部分を読みとばしても大丈夫です。
3分くらいなら時間あるよ!って方はぜひ読んでみてください。下記で説明する理論を知っておくと、ママペイに限らず今後の教育の質が変わってくるはずです。

このママペイは、心理学でいう動機づけをうまく利用したものであるといえます。

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動機づけ=やる気スイッチを押すこと

このやる気スイッチには2種類あります。

  1. 物につられてやる (外発的動機)
  2. 好きでやる    (内発的動機)

一般には「2.好きでやる」のほうが強いやる気が出ます。
子供たちが延々とYouTubeをみたりゲームをしたりするのは、
「楽しい→好き→やりたい!」
と、脳が動いているからです。

※当たり前のことではありますが、やる気をコントロールするには脳の動きを予測する必要があるため、感情や思考の流れはけっこう重要なことです。

 

今回のママペイは、完全に「1.物につられてやる」のスイッチを押すものです。

「1.物につられてやる」やる気は、ぶら下げられているニンジンを手に入れようと頑張る感じです。

ですから、例えば

  • 追いかけ続けてもニンジンが遠すぎて届かない
  • 到達したのにニンジンをもらえなかった
  • ニンジンにあまり価値を感じなくなった
  • ニンジンがほしい気持ちよりも疲れや飽きが上回った

つまり

  • お手伝い1回10ペイ → 5億ペイ貯まったらご褒美
  • 「5億ペイ貯まったよ!」「やっぱりご褒美はなし」「えー!」
  • 「ペイとかくだらね、遊んだほうがいいわ」
  • 「ペイ貯めるのもうだるいわ」

などが起こると、とたんにやる気スイッチが切れてしまう諸刃の剣です。

またこの脆さを利用して、いたずらをやめさせる話も有名です。

あるところに、いろんな家の壁に落書きをして遊ぶ子供たちがいた。叱っても叱ってもやめてくれない子供たちに、近所の人は手を焼いていた。そこであるおじいさんが妙案を思いつく。

今日も元気に落書きをする子供たち。そこにおじいさんが現れて、「やばい、叱られる」と思いきや、「いやあ、これはすばらしい」と言う。しかも、「これから 毎日、この壁に落書きをしてくれないか。その度にお小遣いをあげよう。」と。

「どうして怒らないの?しかもお小遣いまで?」と訝しむ子供たちだったが、楽しい落書き遊びを好きにできて、お小遣いまでもらえるなんて最高の話。それから毎日毎日、せっせと落書きをしてお小遣いをもらう日々が続いた。

ところがある日、いつものように「今日もしっかり落書きをやったぞ。お小遣いをちょうだい」とおじいさんに言うと、「もうお金がない」と言う。

「なんだよ、せっかく書いたのに、むだだったじゃん」と怒る子供たち。おじいさんは「ごめんな、もうお金がなくなったからお小遣いは用意できないんだ」と。

ちっともおもしろくなくなった子供たちは「じゃあ、もう落書きなんかしてあげない」と去って行きましたとさ。

このあとしばらくしてから、この子供たちは「久しぶりに落書きでもやるか」という気分にもなりますが、「書いても一円にもならない」という感覚になって、落書きをやめてしまいます。

つまり、「2.好きでやる」やる気だったものが、報酬を設定することで「1.物につられてやる」にすり替わり、最終的に報酬がなくなることでやる気もなくなったということですね。

最初は「ただおもしろいから」という理由で落書きをしていたはずなのに、不思議なものです。

私も昔よく「一番好きなことは仕事にしないほうがいい」と言われました。
「好きでやっていたつもりなのに、なぜかだんだんつらくなってくるから」と。
それは、報酬が設定されるとやる気の種類が変わってしまうから、ということだったわけです。

ママペイのメリットデメリット

結論からお話しすると、

メリット
  • 子供が自主的に動いてくれる
  • いちいち指示しなくてもいいので、イライラせずに済む
デメリット
  • 見返りのない行動はやらなくなる

ということになります。

 

まずメリットがかなり大きいですよね!
ママペイを使うと、ペイ欲しさに、いちいちうるさく言わなくても子供みずから「望ましい行動」をとるようになります。

正直これは本当に、見ていて気持ちがいいですよ。そしてとんでもなく楽です。

ていうか、「できるなら普段からそうやって動いてよ~…」って感じですよね(笑)

 

しかし、ママペイは手軽に子供の「望ましい行動」を獲得できる反面、大変なデメリットをも併せ持っています。

それが「見返りのない行動はやらなくなる」ということ。

先ほどの落書きの例にもあったように、今まで報酬が発生していた行為から報酬だけを取り除くと、

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「一円にもならないのに、なぜやらなければならないの?」

という思考回路が発生してしまいます。

報酬が発生しないのに行動だけ起こすのは、なんだか損な気分になるというわけです。